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「革命前夜」(著:須賀しのぶ)(Amazonへのリンクです)
昭和が終わり平成に変わるころ、東ドイツの音楽大学に留学した日本人ピアニストのシュウ。
その頃はまだベルリンの壁があり、ドイツはベルリンの壁をもって西と東に分断されていた。
そんな最中、バッハを神の如く想うシュウは、彼の生涯を追うかのように東ドイツの地を訪れる–。
■舞台はドイツ、時代はベルリンの壁崩壊前
前半は、ドイツで出会った同い年ほどの学生音楽家の面々。そこで繰り広げられる人間模様が主です。
嫉妬や憧れ、自身のスランプなどを経験しながら生活する様子が描かれています。
■クラシック音楽の表現力に引き込まれる
序盤はクラシック音楽に対する描写が多く、特にその音に対する表現力は素晴らしかったです。
曲の生い立ちを説明しながら、曲の緩急を言葉で表現していて、
目を閉じると、まるで頭の中に音が聞こえてくるような感覚に鳥肌がたちました。
■ドイツ東側の自由を獲得するリアルな動き
後半にかけて、物語は一気に転換を迎えます。
ドイツ東側の人たちの自由を獲得するまでの動きが、まるでその場にいるかのように分かります。
実父からの繋がりで出会った家族、音大のライバル、仲間、そして偶然の出会いからの恋、、、全てが「ベルリンの壁」に向けた動きに関わり、人と人との繋がりが悲しく、複雑に交差していきます。
■総括
音楽だけではない、社会的な問題も交えたストーリーに目が離せなかったです。
主人公の心の乱れとともに音が不安定になり、
逆に誰かと交わったり精神的に落ち着くことで、最高の音になる時もあったりと
「水のような感性」を持つ主人公の不安定な心の動きと音がリンクし、
文章となって伝わってきました。
読み終わった後は100%満足。
読み終わってしまったという寂しさはなく、シュウと共に最後まで駆け抜けられた安心感と開放感でいっぱいになりました。
読み終えた後、一呼吸おいてから目を閉じてクラシックを聴きたくなるような本です。
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